全国的に見ると、そけいヘルニア(脱腸)の腹腔鏡下手術の7割以上はTAPP法です。腹腔内に炭酸ガスを入れて膨らませます。お腹全体が大きく膨らみ、中に入れた鉗子の可動域が広く、操作しやすいのが特徴です。腹膜の内側から腹膜を一部切って、そこから鉗子を使ってヘルニア嚢と呼ばれるはみ出している部分の付け根を輪状に切り、切り離します。次に穴が開いている部分からメッシュを敷くスペースを確保して、メッシュを広げます。最後に切った腹膜を縫って修復します。このようにTAPP法の場合は、作業スペースが広く確保できるため、当院ではヘルニア嚢が10cm以上まで大きくなってしまった場合に選択しています。TEP法では作業スペースが小さいため大きいヘルニア嚢を引き込みながら剥離するスペースがなくなってしまうためです。また、下腹部の手術を受けたことのある方の手術方法については慎重にご相談させていただきます。
この記事を書いたのは…
2002年山梨医科大学卒業。2008年長野市民病院でTEP法をみて衝撃を受ける。以来、鼠径ヘルニアの理想的な治療はTEP法だと確信して手技の研鑽を積む。2017年8月の開院から全ての手術を執刀。「初診から術後経過まで、執刀した外科医が責任を持って診るべし」が信条。好きな言葉は『創意工夫』