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鉗子(かんし)の話

今日は当院で使っている鉗子(かんし)をご紹介したいと思います。鉗子は細長いマジックハンドのような形状の器械で腹腔鏡手術には欠かせません。腹壁に穴をあけてトロッカー(トロカールと呼ぶこともあります)で穴をしっかり固定し、そこから鉗子をお腹の中に入れて手術します。トロッカーは樹脂や金属でできている鉗子より太い筒状のものです。いろいろ種類があるのでまたの機会にご紹介したいと思います。

開院時に散々迷ったのですが、いつかは使ってみたいと思っていたドイツ製のシャープなデザインの鉗子を選びました。シャフトと呼ばれる30センチ強の細長い金属の筒にハンドルと言われるはさみの柄のようなものを付け、鉗子を通して使います。この柄の部分の直径が鉗子の太さになります。鉗子は、剪刃(せんとう)というはさみとして使うもの、組織を掴むための把持鉗子(はじかんし)、剥離をするためのメリーランドと呼んでいる鉗子、腹腔の中で縫う時に針を確実に持つためにだけ使う持針器(じしんき)という鉗子があります。腹腔の中で縫うことを体内結紮(たいないけっさつ)と呼んでいますが、最近は、体外結紮(たいがいけっさつ)をすることもあります。腹腔の中で持針器を使って糸をかけ、糸をトロッカーの外に牽引して糸を引っ張りながらテンションをかけ、剪刃鉗子や把持鉗子、メリーランドなどで目標のポイントを狙います。今は誰でも体内結紮が出来るようになったので体外結紮はあまり使わなくなった手技ですが、時々、体外からカウンタートラクションをかけるために使っています。その他にしっかり結び目を作り、結び目を目標のところへ送るために使うノットプッシャーがあります。剥離をする際に血管を確実に止血して切るために超音波凝固切開装置も欠かせません。

鉗子は数えきれないほどさまざまな形状・種類があります。把持鉗子だけでも、つかむときに鉗子の向こう側がよく見えるようにゼムクリップのような形の枠だけで出来ていて、中が空洞になっている「窓付き」と言われるもの、内側がギザギザで波型形状になっていてよりホールド力が強いもの、太いもの、細いもの、カーブしているもの、また腸管をつかむためのものなど合わせると数十種類にもなります。剪刃鉗子もまっすぐなもの、右に曲がっているもの、左に曲がっているものなどがあります。当院では剥離鉗子はメリーランドを使用していますが、メリーランド以外の剥離鉗子もありますし、メリーランドにも先端部分のカーブの角度、ブレードの長さが違うものが様々あり、使い勝手のいいものを選ぶことが出来ます。数ある鉗子の中からいろいろな場面を想定し、鉗子を選ぶのも楽しみになっています。

実際の鼠径ヘルニア手術(TEP法)で使用している写真はコチラ

→ 細径鉗子について [2023.11.13更新]

この記事を書いたのは…

横浜青葉そけいヘルニア・外科クリニック | + posts

2002年山梨医科大学卒業。2008年長野市民病院でTEP法をみて衝撃を受ける。以来、鼠径ヘルニアの理想的な治療はTEP法だと確信して手技の研鑽を積む。2017年8月の開院から全ての手術を執刀。「初診から術後経過まで、執刀した外科医が責任を持って診るべし」が信条。好きな言葉は『創意工夫』

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