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鼠径ヘルニアの腹腔鏡手術の質を高めるもの 大型モニター編

[2023.10.17]

鼠径ヘルニアの手術に限りませんが、腹腔鏡手術の質を高めてくれるデバイスはあるのでしょうか?

「そんなものがあるなら、すぐに使いたい」と思う外科医は、世の中に、たくさんいるはずです。

実は、当院でも、手術の質を高めるために導入したこだわりの機器が、

・・・そこそこ、ありまして、

そこそこ・・・どころか、手術に使うものには、かなりこだわりを持っています。

年々、そのこだわりが強くなっている気もします。

本日は、こだわりのデバイスのひとつで、2021年7月に導入した「サブモニター」を紹介します。

 

SONY 有機ELテレビ A90J 65型を手術室用のサブモニターとして導入しました。

導入するきっかけになったのは、別の場所で使用していたPCモニターが故障したためです。2017年8月の開院時に購入したものだったのですが、4年弱の使用で故障しました。「おいおい、モニターって4年で壊れるのか、少し早くないか」と思いましたが、次の瞬間、これがもし手術室のモニターだったらと思い、ぞっとしました。

開院後2年弱が過ぎた2019年5月、腹腔鏡4Kシステムの予備を導入しました。4K本体のプロセッサー、4Kカメラ、光源装置、気腹器まで予備器は導入していたのですが、モニターだけは予備がなく、メインモニターの1つのみで運用していました。このため、万が一の手術中にモニターが故障した場合、映像を映すことができなくなります。「その時は別の部屋からPC用のモニターを持ってくれば」と思っていました。ですが、突然に発生したPCモニターの故障で考え方が大きく変わりました。すぐに手術室にサブモニターの導入を決意しました。

 

導入にあたり、純正品、社外品など含めて、いろいろな選択肢を吟味しました。Olympusから出ている純正品は、31型と55型のものがありました。2015年10月発売のモデルのため、基本設計はおそらく、2014年以前のものと類推されます。2021年7月の時点で、開発から6-7年以上は経過していることもあり、機器の進歩の恩恵が少ないであろう純正品の導入は見送りました。

 

毎年毎年、技術の革新が反映されているものとなると、やはり一般の大型テレビしかありません。毎年、国内外のメーカーが凌ぎを削って、最新技術が投入されている分野です。競争が激しく、需要も多いため、値段も含めて、優れた性能と適正な価格のバランスが取れていなければ売れません。何より、映像処理に使われる半導体は、新しいものの方が格段に性能が向上しています。これを導入しない理由はありません。

 

残る選択肢は、明るいLEDバックライトの液晶か、繊細な色の表現ができて応答速度の速い有機ELか、の2択となりましたが、最終的に有機ELを採用しました。

 

この大型の「サブモニター」を手術台の中心から、1.8mほど離れた壁面に掛けて設置しました。あくまでも位置づけは「サブモニター」ですが、ほぼ「メインモニター」として、ど真ん中に君臨しています。有機ELの特徴である、応答速度の速さ、繊細な色の表現、特に暗めの色のグラディエーションに効果を実感しています。純正以外のモニターを導入する際、一番問題になるのが、モニターで表現する色が微妙に違うことがあるのです。純正品の場合、メーカーがモニターに映る画質を調整している可能性があるので、必ずしも信号を忠実に再現する映像が、実際に目で見ている画像に近いとは限りません。テレビ側には、「ダイナミック」「シネマ」「フォト」など、実際の映像に合わせて、自動でチューニングしてくれるプリセットが幾つか用意されていますが、今回は、信号を忠実に再現する加工なしの「カスタム」モードを使用し、純正モニターと遜色ない、むしろ純正モニターよりも綺麗でコントラストのある映像が映し出されました。

大型モニターの導入前と比べると、Olympus純正の31型の時は、細かい部分は目を凝らしてみることが多かったのですが、65型を導入した後は、目を凝らすことなく、細部まで自然に見えるようになりました。また、術野とモニターの間を視線移動するときも、目を凝らして焦点を合わせることがなくなりました。私はもともと視力が良くて、幸いにも今でもずっと裸眼で過ごしているのですが、アラフィフになりピント調節の機能が少し衰え、老眼が気になり始めていたので、大型モニターは大きな助けになりました。

最初は大きすぎたか、と思いましたが、導入して2年が経過した現在は、この大きさが当たり前になりました。鼠径ヘルニアの手術には、いささかオーバースペックのようにも思えますが、しかしながら大画面の高画質のモニターは、確実に腹腔鏡手術の質を上げてくれます。今となっては、もうワンサイズ大きなもののほうが良かったかな、と思うこともありますが、それはまた次回の機器更新の楽しみにとっておきます。

 

技術の進歩は、日進月歩で時間がたつと大きく変わっていくものです。当院自慢の4Kシステムも新発売から8年、当院で購入してから6年が経過しました。次世代の腹腔鏡システムが登場し始めているため、最先端のテクノロジーの恩恵を受けるべく、次世代機の導入を検討しています。近いうちに、6年間使用している現在の4Kシステムの現状の評価、各社の新機種のデモを行って、あらためてレビューしたいと思っています。

 

鼠径ヘルニアの腹腔鏡手術の質を高めるもの 大型モニター編 2に続く

 

 

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