高性能 気腹排煙装置 『AirSeal』の導入
当院では、気腹・排煙装置であるCONMED社の AirSeal を導入しています。
AirSeal の大きな特徴は、腹腔内の圧を適切に保ち、クリーンな視界を確保する器械です。
腹腔鏡手術は、お腹の中に炭酸ガスを入れて膨らまして『空間』を作り、その『空間』の中で手術を行います。
この『空間』を作るために、炭酸ガスを送り込むことを『気腹』といい、その器械が『気腹装置』なのです。
炭酸ガスを使う理由は、不燃性ガスであり、血液中に速やかに吸収されることが挙げれらます。手術操作の中では電気メスなどの火花が出る器械を使いますので、可燃性ガスでは引火してしまうからです。また血液に吸収された炭酸ガスは、肺胞で酸素とガス交換されて、呼気として体外に排出されるので、人体にとっては安全性の高いガスなのです。全身麻酔管理中は、呼気中の炭酸ガス濃度をモニタリングして、換気の状況を確認しています。
炭酸ガスを送り込むだけなのに、そんなに差が出るのか、といわれてしまいそうですが、結論から言えば、大きな差が出ます。
高性能気腹装置のメリットは2つあります。
①大型コンプレッサーでの速やかな炭酸ガスの供給
②腹腔内圧をリアルタイムで検知することで、安定した腹腔内圧の確保
この2つの機能を高次元で実現したのが、 AirSeal なのです。
一般的な気腹器との違いは?
一般的なOLYMPUSの気腹器と比べると、AirSeal は大型コンプレッサーを搭載しているため、筐体はかなり大きくなります。さらにリアルタイムでの腹腔内圧感知を行い、大型コンプレッサーが瞬時に適切な圧で炭酸ガスを供給してくれます。
たとえばトロッカーのバルブが開いてガスが漏れた時などは、通常の気腹器は腹腔内圧の感知して炭酸ガスが送気されるまで数秒程度かかるので、ガスが漏れて腹腔内圧が下がり、『空間』が狭くなって手術がやりづらいと感じたタイミングでガス供給が行われるため、膨らむまでのタイムラグが生じるのです。また『空間』が狭くなる時に、運悪く、カメラ先端部が周りの組織に触れてしまうと、カメラが汚れて視界が悪くなり、カメラを抜いて拭く操作が必要になります。腹腔内圧の急激な減少は、円滑な手術の進行の妨げになるのです。
これが AirSeal を使用すると、ガスが漏れて減圧が発生したタイミングを瞬時に感知して、大型コンプレッサーで速やかなガス供給が行われているので、『空間』が保たれて、手術が滞りなく継続できます。速やかな腹腔内圧のコントロール、これこそが当院で、 AirSeal を導入した最大の理由です。
当院では、不測の事態に備えて、OLYMPUS製の気腹器も随時、稼働できるようにしてあります。
気腹性能だけではない『AirSeal』の本来の機能
実は、 AirSeal の機能はこれだけではないのです。
AirSeal の送気モードでの圧コントロールでも、十分に術野が確保できるのですが、
専用トロッカーと専用フィルターを使って、炭酸ガスを循環させる機能があるのです。むしろ、こちらが本来の使い方です。
AirSealには3つのモードがあります。専用トロッカーと専用フィルターを使用する『AirSealモード』、トロッカーは汎用で専用フィルターを使用する『Smoke Evacuationモード』、送気の圧コントロールを行う『Standard Insufflationモード』です。このブログでは、便宜的に『AirSealモード』と『Smoke Evacuationモード』を循環モード、『Standard Insufflationモード』を送気モードとしています。
電気メスや超音波凝固メスで組織を焼灼すると、サージカルスモークが発生します。サージカルスモークが発生すると、術野が曇って見えにくくなるだけでなく、サージカルスモークの中には、たばこの煙のように有害な物質を含んでいるのです。この有害な煙を除去するために、フィルターを通す必要があります。 AirSeal は炭酸ガスを循環させて、専用フィルターを通すことで、このサージカルスモークを吸着し、炭酸ガスのみを体内に戻すことができるので、有害な煙を除去するだけでなく、曇った視野をクリアにできるのです。