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鼠径ヘルニアを放置すると、2つの危険性があります。

  1. ヘルニアが大きくなる
  2. 嵌頓のリスクがある

1. ヘルニアが大きくなる

鼠径ヘルニア(脱腸)を放置すると、膨らみがだんだん大きくなっていきます。ひどい人だと、かなり長い期間放っておいて、両手の拳が入るぐらいまで大きくなる人もときどきいます。鼠径ヘルニアの手術は、飛び出ている腹膜を剥離して、腹壁の内側に戻す手術になりますので、飛び出ている腹膜が大きいほど手術が大変になるため、手術時間が長くなり、手術の出血量も多くなる可能性があります。

嵌頓の図1

2.「嵌頓」のリスクがある

そして何より、鼠径ヘルニア(脱腸)を放っておいて、一番怖いのが「嵌頓」です。腸は隙間が空いているとズルズルと飛び出てきます。あまりに腸が入り込んでしまうと、通れたはずの隙間から腸が元に戻れなくなって、締め付けられてしまいます。締め付けられると当然、血流が途絶えて腐り始めるので、とても強い痛みを感じます。嵌頓を起こしてしまうと、横になっても元には戻らないだけでなく、腸管が腐り始めているので、とんでもない激痛を感じます。

嵌頓の図2

「戻らない」「めちゃくちゃ痛い」時は、すぐに救急車を!

「戻らない」「メチャクチャ痛い」、この2つがそろったら、すぐに救急車を呼んで、緊急で手術できる病院を探してもらうしかありません。長い時間(6時間ぐらいといわれています)、腸の血流が途絶えてしまうと、腸が完全に腐って壊死します。壊死した場合、腸管を切って繋ぎなおす手術が必要になり、1-2週間の入院が必要になります。

嵌頓の図3

「嵌頓」の発生率は意外と低いが、油断は禁物

ですから「戻らない」「メチャクチャ痛い」という時は、すぐに救急車を呼んで対応しないと重症化する恐れがあるのですが、「嵌頓」自体の発生率は、鼠径ヘルニアを放っている方の0.3~3%と言われています。実は「嵌頓」まで至ることは、滅多にないのです。しかし「嵌頓」は突然に起こります。30分前まで何の症状もなくて大丈夫だったとしても、その後すぐに「嵌頓」が起こるかもしれません。逆に一生放っておいても、何も起こらないかもしれません。ただ、違和感・痛みが強いときにわざわざ重い物を持ったり、力仕事をしたり、大きなくしゃみや咳をすると、さらに腹圧をかけてしまうため、腸管がさらに押し込まれるので嵌頓のリスクが高まります。違和感が強いときは、横になって鼠径部をさすって、膨らみが元に戻っているうちは、まったく緊急性はないのです。これだけ知っているだけでも、「嵌頓」のリスクはかなり回避できます。わずかですが、鼠径ヘルニアを放置すると、「嵌頓」の危険性があるため、早めに治してしまうことが、無難です。

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