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なぜ鼠径ヘルニア(脱腸)になるのか?

 

 

なぜ鼠径ヘルニア(脱腸)になるのか、その原因は何なのか。まず鼠径部の正常な構造から説明します。

上の断面図で、表面から皮膚、皮下脂肪、筋肉があります。筋肉と筋肉の隙間から、男性では精索、女性では子宮円靱帯という管の束が通る隙間があいています(精索は精管・精巣動静脈からなります)。この隙間がどこを通るかというと、腰骨と恥骨の間の真ん中やや外側から、深い穴が始まって、恥骨のすぐ脇で表面近くに抜けてきます。

ここを通って、精索は陰嚢の中に、子宮円靱帯は会陰部付近に到達し付着します。もともと腹壁には壁を貫く、トンネル状の細い隙間が空いているのです。このトンネル状の細い隙間のことを「鼠径管」といいます。

 

〈正常な鼠径部の断面図〉

 

続いて、筋肉の下の層には、「腹膜」という内臓を包んでいる薄い膜があります。腹膜の内側に胃袋・肝臓・小腸・大腸などの臓器が包まれています。鼠径ヘルニアになっている方は、このトンネル状の隙間「鼠径管」に、腹膜がズルズルと滑って入り込んだ状態なのです。ちょうどズボンのポケットのような袋(腹膜)が、トンネル状の隙間(鼠径管)を通って、皮下の浅い層に飛び出てきているのです。

〈鼠径ヘルニアになっている鼠径部の断面図〉

 

立ち上がると、重力で内臓が骨盤に落ちるので、固定されていない腸がこのポケット状に飛び出た腹膜に入り込んできます。横になると、重力で背中側に落ちるので、ヘルニアの膨らみは引っ込み、平らになります。しかし、飛び出ている腹膜の袋は治るわけではなく膨らんだままなので、立てば膨らみ、横になると引っ込むという訳なのです。この膨らんだり引っ込んだりするのが、鼠径ヘルニア(脱腸)の最大の特徴です。

〈立ち上がった状態〉

 

〈横になった状態〉

 

この飛び出たポケット状の腹膜を手術で切除して、開いた隙間の部分をメッシュで補強しないと、鼠径ヘルニアは治らないため、手術が唯一の治療法になります。

〈手術でメッシュを挿入した状態〉

 

もともと精巣や子宮円靱帯は、生まれてくる前の胎児の段階では腹壁の内側にありました。赤ん坊として生まれ出てくるまでの間に「鼠径管」を通って、男性の精巣は陰嚢まで、女性の子宮円策は恥骨の端まで進んでいくのですが、この精巣や子宮円靱帯が進むときに腹膜を一緒に引っ張りながら進むことがあるのです。子供の頃に鼠径ヘルニアの手術、脱腸の手術をしたという人を聞いたことがあるかもしれません。子供の頃にヘルニアになっている人は、生まれつき大きく腹膜が引き込まれているので、生まれてすぐだとか、小学生ぐらいまでに手術することもあります。

 

〈精巣が腹膜を引き込みながら陰嚢へと進んでいく〉

〈腹膜が生まれつき大きく引き込まれている〉

また逆に、腹膜を全く引き込まれていない人もいます。腹膜が引き込まれているかどうかの引き込まれ具合は個人差が大きいのです。

〈腹膜がまったく引き込まれていない〉

 

比較的多いケースが、「腹膜」は引き込まれていたけれど、壁の隙間がしっかりしていて、腸管が出るほど隙間が開いていなかった。後天的に立ち仕事・力仕事・筋トレ・妊娠・出産などで腹圧がかかったり、年齢的に40代、50代、60代でだんだん筋肉が緩んでくるため、何かの拍子で強い腹圧がかかったときに、ある日突然、隙間が開いてしまって、鼠径ヘルニアになることもあるので、子供からお年寄りまで、全ての年代でいつ鼠径ヘルニアになってもおかしくないのです。

〈最初は壁の隙間がしっかりしていたが・・・〉

〈腹圧がかかることで、隙間が開いてしまった〉

これが、男女ともに、鼠径ヘルニアの約7割を占める「外鼠径ヘルニア」の原因なのです。実は鼠径部のヘルニアには3種類あります。男女ともに一番多いタイプが、この外鼠径ヘルニアなのですが、鼠径部の3種類のヘルニアについては、こちらのページで説明します。

 

鼠径ヘルニア(脱腸)を放置するとどうなる?

 

鼠径ヘルニア(脱腸)はどうやって治すのか

 

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