ここまで構造的な弱点のお話をさせていただきました。どれだけそけいヘルニア(脱腸)になりやすいか、というお話だったんですが、今日は何をきっかけにそけいヘルニア(脱腸)になるのかということを少しお話させてください。
そけい部は3つの筋肉で支えられていて、他の部位よりも少ないこと、そしてそけい管という通路が通っていることはお話させていただきました。そこに、腹圧と呼ばれるお腹に力がかかることをすると脱腸のきっかけとなります。トイレでいきむとき、息を止めて腹の底に力を込めますよね。まさにその時、そけい部に力がかかっています。これはトイレだけのお話ではなく、咳やくしゃみでも同じ力がかかっています。ですので、肺炎になった方、たばこを吸われる方、よく咳をする方は、そけいヘルニア(脱腸)になるきっかけがそうでない方より多いです。あとは、重いものを持つときにお腹に力を入れますよね。こちらもそけいヘルニア(脱腸)のきっかけになります。
そけいヘルニアの患者様に何がいけなかったのか、とよく聞かれますが、こういったごく日常的なことの積み重ねが原因となってしまうことがほとんどです。ですから、何かしたから、そけいヘルニアになってしまったのではないかと落ち込むことはありません。腹圧がかかるすべての日常生活の動作が鼠径ヘルニアの原因になりうるので、なってしまった場合は、早めに治すことが大事です。
この記事を書いたのは…
2002年山梨医科大学卒業。2008年長野市民病院でTEP法をみて衝撃を受ける。以来、鼠径ヘルニアの理想的な治療はTEP法だと確信して手技の研鑽を積む。2017年8月の開院から全ての手術を執刀。「初診から術後経過まで、執刀した外科医が責任を持って診るべし」が信条。好きな言葉は『創意工夫』