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第36回日本内視鏡外科学会総会に参加しました

[2023.12.25]


 

12月上旬の、とある木曜日、内視鏡外科学会総会に参加してきました。

先日のブログで紹介したGi外科クリニックの皆さんに見学に来ていただいたのも、学会期間中だったのですが、見学に来ていただく2日前に学会に参加してきました。・・・ブログでの時系列が逆になってしまいました。

今回の学会での発表はなかったのですが、「女性のヘルニア」というセッションの座長での参加になりました。

 

「女性のヘルニア」のテーマで、学会で症例発表が多くなる代表的な疾患が、「Nuck管水腫」と「子宮広間膜裂孔ヘルニア」になります。鼠径ヘルニアと関連が深いのが「Nuck管水腫」、鼠径ヘルニアと直接の関係はないですが、子宮広間膜という膜の隙間に腸管が入り込んでしまって内ヘルニアの状態になり、緊急手術に至ることが多いのが「子宮広間膜裂孔ヘルニア」になります。

 

 

「Nuck管水腫」については、2020年の日本ヘルニア学会学術集会で、「TEP法でのNuck管完全切除の手術手技の工夫」という発表で、日本で初めて、TEP法においての「後壁切開法」によるNuck管水腫の完全切除を報告しました。「後壁切開法」は、私が考案した術式になります。そういった経緯から、今回、女性のヘルニアのセッションの座長のお話をいただきました。腹膜前腔からアプローチするTEP法では、鼠径管内に発生するNuck管水腫を損傷することなく切除できるといった内容になります。それまでは腹腔鏡下(TAPP法)と開腹法を併用したHybrid法での切除の報告が散見されましたが、腹膜前腔からアプローチすることによって、鼠径部切開法を併用することなく、腹腔鏡操作のみで「Nuck管水腫」を切除できる後壁切開法は、有用な切除方法であると考えております。

今回の座長でのセッションでは、TEP法での後壁切開による切除の報告と、Hybrid TAPPでの切除の報告でした。Nuck管水腫の切除において、後壁切開法は広がりつつあるようで嬉しいです。

 

 

 

「子宮広間膜裂孔ヘルニア」とは、子宮の「広間膜」という子宮を支える靱帯の間にできる膜のことです。この「広間膜」にできた「裂孔(すき間)」に腸管が入り込んで内ヘルニアを起こしたものを「子宮広間膜裂孔ヘルニア」と呼びます。子宮広間膜裂孔ヘルニアは、腸管が嵌り込むことによって、腸管の血流障害が起こり、下腹部の強い腹痛で発症します。強い腹痛が続いたのち、腸管内容物の通過障害が進むため、腸閉塞症状が続発します。おなかの中で嵌り込んで、腸管が腐り始めるため、「鼠径ヘルニア嵌頓」のように膨隆が戻らないといった、体表から目に見えてわかる症状がないため、診断が難しくなります。

 

 

「子宮広間膜裂孔ヘルニア」を発生しやすいのは、妊娠・出産歴のある女性や、婦人科手術歴がある女性に発生しやすいといわれていますが、妊娠・出産・手術歴のない女性に発生することもあります。基本的には片側(左>右)で発生することが多いですが、両側に裂孔を認めることもあるため、片側の発生でも、必ず反対側に裂孔が生じていないかの確認をしたほうがよいです。「裂孔」を閉鎖する縫合糸は、吸収糸を使うと再び裂孔が開いて再発することがあるため、非吸収糸を用いた方が再発のリスクが下げられます。「子宮広間膜裂孔ヘルニア」は、入院・緊急手術が必要な疾患のため、当院で治療することはできませんが、「反対側の確認」と「非吸収糸での閉鎖」の重要性は、経験してみないとわからない報告であったため、非常に勉強になりました。

 

 

内視鏡外科学会の目玉といえば、医工連携の会場が充実していることが挙げられます。医療と技術革新は切っても切れない大事なつながりがあるのですが、内視鏡外科学会ではかねてより、医工連携に力を入れており、革新的なアイデアを具体化する医療機器開発のブースが数多く見られます。こういった新しく開発された機器が一堂に会するのです。まだ認可をとっていないような開発中の製品が展示されていたり、実際に手に取って確認ができたりするので、毎回、大きな楽しみになっています。

 

2024年1月発売 strykerの新モデル 1788

          

2020年12月発売 アダチ FLEXI VISION easy 4Kカメラシステム

 

今回、特に注目したのは、腹腔鏡手術の要となる腹腔鏡カメラの器械展示です。Olympus、STORZ、Strykerの3大メーカーのほかに、アダチといったメーカーが4Kカメラの展示を行っていましたが、2020年発売のアダチと2024年1月発売予定のStrykerの製品のデモを依頼してきました。これらの2製品の使用した感想は、現在、当院で使用しているOlympus VISERA 4K UHDと比べて、どれだけ性能が向上しているか、客観的な指標を交えて、レビューしていきたいと思います。

 

 

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